■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
〜MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.078 2010/02/04
購読者:21,215 (まぐまぐ:15,571 メルマ!:674 めろんぱん:5,098)
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■■■_新春特別号:ボロが教える戦略BASiCS 9_■■■
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●顔が見えれば、ニーズが見える!
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◆新春特別講義 ボロが教える戦略BASiCS 〜 白ネコ 外伝
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「白いネコは何をくれた?」のメンター、白いネコのボロが教える、
戦略BASiCSの奥義。
希代の戦略家、ボロが教えるBASiCS実戦講座!
白いネコは何をくれた 「あれから3ヶ月後」
です。
今回は連載9回目!
●これまでのあらすじ
広告代理店、サンデー広告社は、大口取引先の化粧品会社を失うとい
うピンチを、営業担当(当時)の日向実直(ひなたさねなお)、制作
担当(当時)の鳥野智子(とりのともこ)、高見理香(たかみりか)
の活躍で何とか乗り越えた。
そのときのメンターが、言葉を話す白いネコ、「ボロ」。
(この活躍は、拙著「白いネコは何をくれた」でどうぞ)。
その活躍により、日向実直は初代戦略プランナー、鳥野智子は初代ク
リエイティブプランナーに就任。高見理香はアートディレクターに昇
進。3人で仕事を進めるようになった。
同時に、危機を乗り越えて共鳴しあった実直と智子は恋人同士として
その仲を深めていった。
実直は、あらたなクライアント、サンライズビルからの発注を得た。
サンデー広告が入居する超高層オフィスビルだ。その営業戦略と営業
ツールを見直して欲しい、という。
早速、実直と智子は戦略BASiCSで営業戦略を考えて行くことに
した。クライアントはオフィスビルなので、その顧客であるテナント
は法人。BtoCである化粧品と違い、BtoBの営業戦略の戦略提
案には戸惑いを感じた。
実直と智子は深夜まで会社の会議室で2人は議論を重ねるが、行き詰
まり、いつしか深い眠りへと落ちると、いつの間にか白いネコ、ボロ
が目の前に現れ、教えを授けると、消えてしまった。ボロの教えは、
やはりBASiCS。
それをヒントに、クライアントのサンライズビルにとっては顧客とな
る自分の会社の三出社長に、オフィスビルのニーズをヒアリング。つ
いに切り口が見えた!
その切り口に基づき、他のテナントさんにもヒアリングをついに開始
した……
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◆「3つの魔法の質問」のヒアリング、開始!
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実直たちは、「3つの魔法の質問」を、色々と聞き方を試しながら、
既存テナントへのヒアリングを進めていった。
●質問1 B:競合
・前にどんなビルにいたのか、どこから引っ越してきたのか
・サンライズビル以外にどんな候補があったのか
●質問2 S:強み
・前にいたビルからサンライズビルに引っ越してきた理由は何か
・サンライズ以外の候補ではなく、サンライズに決めた理由は何か
●質問3 C:顧客
・サンライズビルに入っているのは、本社か、営業部などの部署か、
「使い方」は何か
・意思決定者は誰だったのか、社長か
ヒアリングも終盤にさしかかった。次は、外資系のメーカー、C社に
実直と智子がヒアリングに行くことになっていた。
2人は、いかにも外資系というオフィスを訪れ、挨拶を交わしてヒア
リングを始めた。
実直はセオリー通り、質問1 B:競合の質問から始める。
実直:御社は日本進出時からこのビルにご入居されてらっしゃいまし
たか?
C社:最初は小さいビルで数人で立ち上げ準備室を作ったようですが
そこから引っ越してきました。
実直:なるほど、では大きいオフィスとしては、ここが最初、という
ことですね。
C社:そうなりますね。
実直:その移転の際の選択肢には、他にどんなビルがありましたか?
C社:最後まで検討したのは、六本木ヨルズだったようです。
実直:あ、あの超ハイグレードビルの……
実直と智子は、競合:六本木ヨルズ、とメモをすかさず取っていく。
智子:では、六本木ヨルズとサンライズが最後まで検討に残った理由
と申しますか、基準みたいのはありますか?
C社:日本の本社ですので、それなりのグレードのビルに入りたかっ
たというのと、うちの社長が、眺めが良いところがいい、と…
実直:えっと……その社長の方は、今でもいらっしゃいますか?
C社:ええ、本国から派遣されたアメリカ人の社長です。まあかなり
個人的な好みもあったようですが……
実直:他にはありませんか??
C社:そんなものだったと思いますが……
智子:海外への出張や、海外からのお客様を迎えられるということは
ありませんか?
C社:あ、そうそう。そうですね、それもあります。ここは成田への
リムジンバスが結構出ているので、それも便利ですね。
智子:なるほど……空港へのアクセスですね……
C社:お客様を迎えるということでいえば、便利なのはプリンセスホ
テルですね。同じ敷地内にホテルがあると、何かと便利です。
実直:米国本社のお客様がお泊まりになったりされるわけですよね?
C社:そうです。こちらに成田からリムジンバスでいらしていただき
お迎えし、そのままホテルに案内できるので、ラクですよ。
智子:食事なんかもこのビルで取られます?
C社:そういうことが多いですね。時差なんかで結構疲れていらっし
ゃると、食事、宿泊が全部ここで済んでしまうのはいいですよ
実直:確かにホテルや飲食施設が揃ってるオフィスビルって都心の超
ハイグレードビルばかりですよね……
実直と智子はうなずきあい、次の質問へと移っていく。次は「強み」
についての質問だ。
実直:では、六本木ヨルズではなく、サンライズビルにご入居を決め
られた理由は何でしょうか?
この質問の仕方に、実直たちは自信をつけていた。「●●ではなく、
サンライズにお決めいただいた理由は何ですか」と、比較対象を明確
にした上で質問すると、対競合の強みが明らかになる。●●には、も
ちろん最初の質問で確認した「競合」が入ることになる。
漠然と「なぜサンライズに入居したんですか?」と聞くと、とりとめ
も無い答えが返ってきてしまうのだ。
つまり、実直たちは、自分たちがBASiCSを考えるのと同じよう
に、お客様にBASiCSを尋ねればいいんだ、ということをようや
く理解したのだ。感覚としては、お客様に「BASiCS」という言
葉を使わずに、お客様の中にあるBASiCSをひきずりだしていく
感覚だ。
気づいてみれば当たり前だが、それはそれで難しい芸当だった。
BASiCSという言葉を使わずにBASiCSを説明するには、
BASiCSを120%理解している必要があるからだ。
C社:えっと……まあ一言で言えば、価格、ですね。
智子:低価格、ということでしょうか?
C社:まあそうです。こう言ってはなんですが、入れるのならヨルズ
の方がいいと言えばいいのですが、予算的に厳しく……
実直:な、なるほど……ヨルズに比べるとかなり賃料が違いますよね
C社:そうですね……数割は違いますし、毎月、毎年発生するもので
すから、その違いは結構大きな金額になりますよ。
実直:逆に言うと、ヨルズには、その価格差ほどにはメリットを感じ
なかったということですか?
C社:そうも言えますね。外資系の金融機関さんなんかはああいうビ
ルに入れるでしょうが、私どもはそういうわけでもないので。
智子:なるほど……お手頃な価格の割にはいいビルだった、という感
じですか?
C社:あ、そういう言い方、いいですね。そうですね、これだけのビ
ルの割には、結構リーズナブルですよ。
実直と智子のノートには、「強み:低価格」とはっきり書かれた。
最後に、C:顧客についての質問だ。
実直:ここは日本の本社ですから、全ての機能がここにありますよね
C社:そうですね。営業なんかも全てここからです。
智子:ということは、九州や北海道への営業もここからですか?
C社:そうですよ。あ、その意味では、羽田に行くのが便利っていう
のもありますね。ここからリムジンが出てますから。
実直:そうなんですよね、池袋って不便なようで意外と便利なんです
よね……
C社:プリンセスホテルがここにある、っていうのは大きいですね。
だからここからリムジンバスが出るんでしょうし……
実直たちは、「強み」のところに、「全国的に営業をするためには、
羽田へのアクセスが便利」と付け加えた。
「顧客」について確認しながら、「強み」についての答えがでてくる
ことは少なくない。
智子:最後の質問ですが、このビルにお決めになられたのは社長さん
ですか?
C社:そうです。もちろん色々な情報を見た上で、ですが、ここから
の眺めが気に入って、それで決めたみたいです。
実直:そ、そうなんですか?
C社:お恥ずかしいですが、そうです……夜景がいたく気に入ったよ
うで……まあ個人の好みと言ってしまえばそうですが
智子:いえいえ、確かにキレイですよね〜。
実直:失礼に聞こえたら申し訳ないのですが……
C社:いえ、どうぞ
実直:外資系の会社さんですと、そういう鶴の一声で決まることって
多いのでしょうか?
C社:ははは、そんなのばっかりですよ。でも、このビルは社員にも
評判は悪くないので、結果オーライですね。
実直:はい、ありがとうございました!
実直と智子は、手厚くお礼を言って、退出した。
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◆「顔が見える」マーケティング:ミクロはマクロ、マクロはミクロ
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2人はヒアリングをまとめる時間をとるためにも、、エレベーターに
乗ると、最上階のレストランに向かった。
2人は窓際の席に着くと、眼下に広がる眺望をしばらく見つめた。
智子:確かに、この眺めがいいからサンライズに決めた、っていうC
社の社長さんの気持ち、わかるね……
実直:うん……地平線が丸くって……
智子:高いところにいるんだな、っていうのがわかるよね。
実直:そう……視点が高くなった感じ……今回、BASiCSでヒア
リングして、それ思った。
智子:あ、わたしも! その視点が高くなった感じ、わかる。
実直:ヒアリングしながら、全部を俯瞰できる感じがしたんだよね。
智子:俯瞰、って?
実直:なんていうか、お客様がたくさんいて、その個別の顔が見えな
がら、それらが集まってサンライズビルになってる……
智子:あ……ほら、あの、写真をたくさん集めて、遠くから見ると別
の絵になってる、アレみたいな感じ?
実直:あ、そうそう。始める前は、「どうすればいいんだろう」って
思ってたけど、見えてきた。
智子:結局聞いてみないとわからない、ってことだよね。答えはお客
様が持ってる……
実直:うん、そうなんだと思う。僕の失敗は、紙のデータを見て、結
論を出そうとしまったこと。お客様の「顔」が見えてなかった
智子:ううん、それは私も。業種業態とか、企業規模とかは、目に見
えるだけの違いでしかないんだよね。
実直:うん。結局は「会社」じゃなくって、やっぱり「人間」だった
ね。BtoBでもね。
智子:そういう意味ではBtoCもBtoBもおんなじだね!
実直:今回思ったけど、BtoBって楽しいね。お客様の顔が本当に
見えるからね。実際に話せるわけだから。
智子:そうそう! 眺めがいいからサンライズビルにするなんて、面
白いよね。外資系の社長でも、人間くさくって……
実直:そう! 社長が「エイヤ」で決めるっていう意味では、外資系
も中小企業も同じなんだよね。
智子:うん。日本の伝統的大企業だと、プロジェクトチームとかそう
いうことになるけど、そうならないこともあるんだね。
実直:ボロが、BASiCSのCでは、顧客の意思決定プロセスを考
えろ、って僕らの夢の中で言っていたよね……
智子:あ……そうか、それってこういう意味だったんだ! 誰がどの
ように意思決定するのか……
実直:うん。それによって営業プロセスも変わるよね。
智子:そ、そうだわ……社長が決めるんなら、社長にアプローチしな
いといけないわ……
実直:当たり前なんだけどね……それは、「顔が見える」からわかっ
たことだよね。
智子:そうだわ……顔が見えて、かつ全体が見えるから俯瞰できる…
そして、顔が見えれば、ニーズがわかる……
実直:うん……顔が見えないまま、マクロの業種業態とか、企業規模
とか、そういう無機質なところから入っちゃったのは反省。
智子:うん……データには「お客様の顔」が無かった……結局は、お
客様一人一人の積み重ねが「マクロ」(全体)だもんね……
実直:ミクロが見えないとマクロが見えないんだよね……本当に痛感
した。やっぱりお客様の「顔」を見ないと……
智子:そうだよね……だって、お客様によって競合が全然違うわけじ
ゃない? C社の競合は六本木ヨルズだったし……
実直:そう! サンライズビルが「安い」って言われたときはちょっ
と驚いた。
智子:競合がヨルズだから、当たり前と言えばそうなんだけどね。
実直:うちの会社の場合は、奮発してサンライズに入ったわけだけど
結構違うよね。お財布の状況によっても。
智子:順番として逆だったね。最初にうちの社長にヒアリングして、
それから考え始めればよかった。
実直:うん。それ、大きい収穫だね。BASiCSを考えるプロセス
がやっとわかってきた感じがする
智子:うん……私たち、まだまだだね……
実直:ううん、そんなことないよ。強みは弱み、弱みは強み。
智子:あ、そっか。さすがなおくん。まだできてないってことは、こ
れから伸びしろがあるってことだね!
実直:そうそう。そもそもBASiCSみたいな思考方法があること
を知らない人の方がはるかに多いわけだからさ。
智子:そっか……こうやって色々経験して、BASiCSの使い方が
うまくなっていけば、それが「独自資源」になるんだね!
実直:あ、そうか……そういうことだね! 経験すれば、それがその
まま独自資源になる!
智子:うん! あ、あの……なおくん……
実直:??
智子:これからもよろしくね……私、なおくんと仕事できて、本当に
嬉しい。自分が高みに上っていってる実感があって……
実直:そ、そんな……僕の方こそ……ともちゃんがいるからこそ、こ
んなに頑張れて……
智子の瞳には、夕日に照らされた実直の顔が映りこんでいた。実直の
顔が赤くなっているのは、夕日のせいか、それとも……
智子が視線を窓へと動かすと、夕日が眼下の米粒のように小さい建物
を照らしていた。
智子:キレイな夕日……
実直:う、うん……とってもキレイ……
そう言った実直は、夕日ではなく、智子の顔を見つめていた。
<次号に続く>
ついに1ヶ月以上続いてしまったこの連載……いただいている感想で
は結構評判がいいのが何よりです。
さて……お気づきかもしれませんが、この「外伝」にはモデルがあり
ます。そうです……拙著「経営戦略立案シナリオ」のZビルの事例で
す。
●「経営戦略立案シナリオ」 佐藤義典 著 かんき出版
経営戦略のガイドブック:経営者は必読!
http://www.sandt.co.jp/scenario.htm
本には結果だけを載せていますが、実際には私が悩み苦しみながら、
考えていきました。
もちろんボロはいませんでしたし、彼女とこんなに楽しそうに打ち合
わせしながら進めたわけでもありませんが、考え方のプロセスは割と
リアルにシミュレーションしています。
経営戦略立案シナリオのケースの背景にある考えるプロセスとしても
この「外伝」はお楽しみいただけます。お持ちの方、今一度経営戦略
立案シナリオを読み返してみてください。
サエナイ主人公、日向実直と、アイスドール 鳥野智子、アイアンレ
ディー 高見理香の3人が織りなす珠玉のラブロマンス……ではなく
て人生戦略物語!
「白いネコは何をくれた?」 佐藤義典著 フォレスト出版
物語形式でわかりやすいマーケティング戦略と人生戦略
http://www.sandt.co.jp/shiroineko.htm
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▼今日の日記▲
ようやく、カラダの方がほぼ全快しました。肉離れも、まだ痛みはあ
るものの、普通に歩けるようになりました。おなかの方も、普通のも
のが普通に食べられるようになりました。歩ける、食べられる、とい
うことがこんなにありがたいモノだとは……
ところで、「売れる会社のすごい仕組み」がまた増刷! これもお買
い上げいただいたアナタのお陰です。ありがとうございます! 発売
半年で2回増刷、というのは結構早いペースです。BASiCSを中
核にした、「売れる仕組み」のサイクルが世の中に広がって、不況脱
出のお役に立てればいいな、と思います。
売多真子シリーズはこれで最後にしようと思っていたのですが、もし
また「外伝」みたいなものが、今回みたいな連載で書けるようだった
ら書きたいな、と思います。ニーズあります??
●今日のiPod Tune:ココロあたたまるポップスソング!
もう立春とはいえ、まだまだ寒いです。気候が寒くても、お財布の中
が寒くても、ココロの中さえあたたかければ幸せ!
ということで、ココロあたたまるポップスソング特集! 和洋問わず
ココロあたたまる曲(例によって独断と偏見で)をとりあげていきま
す!
今日の曲は……
Kiss On My List by Hall&Oates
1980年の大ヒット曲。彼らにとっては、久しぶりの全米1位の曲
で、復活の狼煙をあげた曲。
「君のキスは僕の人生の中で最高なことのリストに入る」と高らかに
歌い上げます。
最初、「list」ではなく wrist(手首)かと思ってしまいました……
80s中頃、華麗な曲がヒットチャートを彩りますが、その前兆とい
うかそれを予感させる良質なポップソングです。
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