■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
〜MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.209 2011/08/04
購読者:25,370 (まぐまぐ:16,386 メルマ!:908 めろんぱん:8,076)
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■■■■■■■__達人マーケターへの道 7__■■■■■■■
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●中級から上級に上がるときのカベの1つが「普遍化」。「構造化」
と「条件の明確化」で「普遍化」しよう!
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◆復習:達人マーケターへの道
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●達人マーケターへの成長の道のり
達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。
笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。
●入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る
「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。
○「こんなの作りたいな」という開発担当
○「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
○「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
○「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者
全体の6〜7割の方はこのレベルです。
●初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点
ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、
○自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ
という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。
全体の2〜3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。
●中級マーケター:一流マーケター
ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、
○お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない
と悩み抜き、
○お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない
という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。
●上級マーケター
「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。
「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。
恐らく日本には数千人いるでしょう。数千〜数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。
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◆上級マーケター:「観察結果」を「解釈」できる
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●前回の復習
前回、上級マーケターは
○日常を「観察」し「記録」する
○「観察」「記録」を続けると、「幽体離脱」(お客様の見ているモ
ノが見える)できる
ということを見てきました。
「観察」「記録」は、やる気さえあれば入門者でも初級者でもできま
すので、今すぐにでも始めることをオススメします。
今回は、「観察」→「記録」の、さらにその「先」です。
●上級者は「観察結果」を「解釈」できる
上級者には「見えているもの」をきちんと「解釈」できます。
「観察」→「記録」→「解釈」
ということですね。
例えば、電車の中では、カップルで1つのウォークマンに刺した1つ
のイヤホンを、片耳ずつに分けて耳につけている人たちがいます。
普通の人は見逃す光景です……が、上級者は当然見逃しません。
「なるほどなあ……」と考えるわけです。
その光景を「解釈」すると……
「ひょっとして、イヤホン差し込み口が2つある、カップル用のウォ
ークマンはニーズがあるのでは? あるいは、2人分ついた2人用
イヤホンでもいいかも……
というような発想がフツーにできるわけです。
目の前に見ている光景に「意味」を加えることができるんです。
ただ、これくらいなら、「中級」レベルでもできるかもしれません。
「上級」はここから先が違います。
「観察」→「記録」→「解釈」の次は……
「普遍化」です。
「普遍化」とは、言葉の通りの意味ですが、一応定義しておくと……
「ある状況において適用できたことを、他の状況においても適用できる
ようにすること」
としておきます。
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◆普遍化その1:「構造」を捉えて、「構造化」する
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普遍化のポイントを、ここでは2つあげておきます。
1)構造化
2)条件の明確化
です。
まず1つめは「構造化」です。
●上級者は、「構造化」できる。
上級者は、先ほどの、「1つのイヤホンを2人で分けている」光景を
見て、
「これってどういうことなんだろう?」
と考えます。
すると、これは……
「要は、1つのものをカップルで分けている」
ということだよな、と「構造化」できます。
「構造化」とは、「形式として表現できる能力」、とここでは定義し
ておきます。
先ほどの「イヤホンを2人で分けている」場合、
ウォークマン
□
↓ ↓
● ●
男性 女性
といった感じで「形式として表現」できますよね。
すると、この「ハコ」の中に入るものが変わっても、ハコの中身が変
わるだけで、「構造は同じだ」ということがわかります。
1つのレモネードを2人で飲むカップルは、上の図式で言えば、
レモネード
□
↓ ↓
● ●
男性 女性
となります。
こう表現すると、何となく「理系的」な感じがするかもしれませんが
別に「図」にしなくても構いません。
文系的に表現すると
「1つのモノを2人で利用している状態」
と表現できます。
●構造化すると、「展開」が可能になる
1つのイヤホンをカップルで分けて聞いている状態を見て、それを
「1つのモノを2人で利用している状態」
と「構造化」できれば、これは……、
「1つのレモネードに2本のストローをさしてカップルで飲む」
という、松田聖子さんの歌に出てきそうな情景と、分けているモノが
音楽なのかレモネードなのかという違いだけで、「1つのモノを2人
で分けている、という意味では同じだ」、と「展開」できます。
これは、言われれば当たり前だ、とおっしゃるでしょうが、実際には
極めて難しいことはやってみればわかります。
ここまで構造化できると………
「ちょっと待てよ、子供がいる夫婦なんかが夜、一緒にテレビやビデ
オを見るときもあるよな……子供が寝るときには大きな音をつけられ
ないから、そういうときにはいいかも! 家庭用の2人用イヤホンも
ありだな。そもそも、何でイヤホン端子が2つあるBDレコーダーは
ないんだろう?」
と考えが「展開」していきます。
そして、売れるアイディアが出れば、リサーチしてお客様に確認する
わけです。
「達人への道 4」で、以下のように書きました。
○「こういうのは欲しいですか?」という「こういうの」を考えるの
がマーケターの役割
○お客さまに聞くのは、それに対しての「はい・いいえ」(5段階で
もいいですけど)でしかない
という、「こういうのを考える」瞬間は、上級マーケターには日常的
な作業なんですね。
●「つけ麺」を食べながら考えること
上級者は、つけ麺を食べながら(ものの喩えですが、実際に今そうし
ています……)でもアイディアが出ます。
例えば、今「つけ麺」を食べながらこれを書いていたとします。
で……「スープ割りいかがですか?」と聞かれて、「何ソレ?」と尋
るお客様が隣にいます。
私の理解でつけ麺の「スープ割り」を表現すると、
「冷めてしまった付け汁に、熱い出し汁を加え、再加熱し、かつ少し
薄くして、付け汁を飲んでいただく」
ということです。しかし……
「構造化」ができれば、そんなまどろっこしい説明をせずに、
「そば湯みたいなもんです。そば湯の代わりに出し汁を入れます」
と答えられます。
それは、「スープ割り」と「そば湯」の「構造」が非常に似ているか
らです。
また……つけ麺の味は「ピリ辛スープ」だったのですが……
「ピリ辛味噌」
が、スープに入らずに、分けられて別に出てきました。自分の好みに
応じて、味噌を「自分で」加えて調整する、ということですね。
これを「構造化」すると……
「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」
という、いわゆる「セルフカスタマイゼーション」の仕組みであるこ
とがわかります。
私は、今あるサイト(売れたま!のサイトなんですけどね)をブログ
で構築中です。あるソフト(と正確にはあるテーマ)を使って、
「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」
作業をしています。
これは、「本質的には」同じ仕組みであることがわかりますね。
「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」
というところまで普遍化すれば、
・つけ麺の辛味噌スープを自分で調整する
・ブログのパーツや画面を自分で調整する
ことは「本質的には」同じなんですよね。すると、これは業種業態な
どに縛られずに「展開」できるアイディアになり得ます。
●「構造化」できれば、アイディアは無限に出てくる
このような「構造化」に慣れると、つけ麺を見ても、何をしても、
「自分のビジネスに使うとどうなる?」と考えることができます。
何をしても、何を見ても、
○観察→解釈→構造化→自分への落とし込み
というサイクルが回り、「では自分の場合は?」と考えられるように
なります。私の言葉で言う「マーケティング脳」が活性化された状態
をいつでも維持できるんですね。
先ほどの、「1つのイヤホンを2人で分けている光景」の場合……
食品スーパーの方だったら、同じ光景をみて……
「あれ……これは同じ音楽を2人で分ける、っていう発想か。じゃあ
超大盛りのカップ焼きそば、あれを「家族のオヤツに、子供と分けよ
う」という売り方もできるな……」
と考えるかもしれませんね。
○観察→解釈→構造化→自分への落とし込み
というサイクルが自然に回るんですね。
すると、アイディアが無限に出てきます。
フツーの人には浮かばないアイディアも浮かびます。これがフツーの
人から見ると「天才的な閃き」に見えるわけです。天才でも閃きでも
なく、「見ているものが違う」だけなんですよね。
ちなみに、上記のイヤホンは、私がいつも思っていることなんですよ
ね……甘いラブソングを2人で一緒に聴きたいカップルとかにはいい
んじゃないですか? え、私自身の体験に基づいているのではないか
って? 残念ながら違います……。あくまでも「観察」からですので
誤解なきように……。
別に、2人で聞くのはラブソングじゃなくてもいいですよ。私のCD
をiPodに落としていただいて、移動中に部下の方と2人で聞いてもい
いわけですから。これも「解釈→普遍化→自分への落とし込み(私の
CDの用途提案)」の1つの例ですよね。
●構造化すると、「構造をズラす」ことができる
「同じウォークマンから、1つのイヤホンで音楽を2人で分ける」
「同じレモネードを、2つのストローで2人で分ける」
という「構造」においては、両方とも、2人の「利用時間」は「同
時」ですね。一緒に音楽を聴き、一緒にレモネードを飲みます。
では、さらに2人の「利用の時間軸」を「ズラして」みましょう。
「1つのモノを2人で利用するが、利用時間帯が違う」
という、「時間」をズラした「構造」を考えて見ます。
すると
・別荘の共同利用
・レンタカー(車の共同利用)
・同じパソコンを、ユーザー権限を分けて家族で使う
・製品生産の外部委託(同じ工場を違う会社が分けて使う)
などは、
「1つのモノを2人で利用するが、利用時間帯が違う」
という共通の「構造」を持っていることがわかります。同時に2人で
使えない、という「制約要因」があるために、時間をズラすことで、
「共同利用」を可能にしているわけです。
「構造化」することで、このように「どこを変え、どこを変えない」
という「ズラし」が、意識的・明示的にできるようになります。する
と、それこそ「無限」に「展開」できるようになるんですね。
上級者(正確に言うと、このような構造化スキルに基づく普遍化がで
きる人)は、
「何で知らない業界なのに、そんなにアイディアが出るんですか?」
と言われることが多いはずです。
それは、上記のような考え方ができるからですね。
見え方は違っても、「構造」が同じであれば、他業種の成功事例を
「応用」できるわけです。
一見業種業態が全く違っても、「構造」が同じなら、別の業種で成功
したことが使えることは少なくありません。
すると、
「自分の業種は特殊だ」
と思っている人には及びも付かない業種から、成功事例を持ってくる
ことができるので、「この人は天才か?」と思われる、ということで
す。タネを明かせば単純ですが、「単純」だからと言って「簡単」で
はない、ということはもうおわかりですよね。
恐らく、日本(又は世界)のビジネスパーソンの8割以上の方が、
「うちの業界は特殊だ」
と思っていますが、それはこのような「普遍化」「構造化」ができて
いないことの証です。
●文系でも理系でも「構造化」はできる
このような構造化は、理系の方の方が得意なように思いますが、おそ
らくは理系・文系問わずできると思います。
理系と文系の違いは、おそらくは「表現」の問題ではないか、と考え
ています。
例えば「集合論」は、基本的には「数学」で扱われる「学問」の範疇
です。
A∪B:AとBの和集合
・Aに含まれるものとBに含まれるもの全て
A∩B:AとBの共通部分
・AとBの両方に含まれるもの
理系的「表現」(数式による表現)と文系的「表現」(国語文での表
現)という違いはあっても、「考え方」は同じですし、突き詰めれば
同じようなところに行き着くのではないか、と考えています。
集合論は、マーケティングではセグメンテーションにおいて重要な概
念になりますね。競合や顧客が重層的に絡み合うBtoCマーケティ
ングにおいては、このような論理関係を整理するスキルは重要になっ
てきます(私の言葉でいうところの「一貫性」です)。
文系の方でも、緻密に考えられる方は、非常に緻密に考えられます。
本の章立て・見出しを見れば、大体その人の「論理的思考力」はわか
ります。
章立てに、
(A+B) × (C+D+E)
というようなきちんとした構造化ができている著者さんもいれば、
「この人、思いついた順に、気分で書いてるんだろうなあ」という方
もいらっしゃいますね。
私の本については、アナタがご評価してください。
例えば、ベストセラー「図解 実戦マーケティング戦略」は、
(A+B+C+D+E)=F
という「構造」です。A〜Eが、BASiCSなどの各ツール(ピラ
ミッドツール)で、Fが最後の事例です。当然最初からこのように計
算して書いているわけです。
逆に言えば、緻密に考えられている本の構成は、このように数学的に
表現できるんですよね。
いわゆるMECE(モレなく、ダブりなく)という文系的な「論理構
成」も、
全体=A+B+C : A,B,Cが「全体」の「部分集合」
A=a1 + a2 + a3 : a1,a2,a3が、Aのそのまた「部分集合」
と、理系「的」に、数式で表現できますよね。
「表現」の問題はヨコに置き、このような「構造化」は、文系的な方
でも理系的な方でも、練習すればできるようになります。
●構造化は、学べるスキル
グッドニュースは、このような「構造化」は、学べば誰でもできるよ
になるスキルです(うまいヘタ、習得の早い遅いはあるにしても、で
す)。つぶやきイメージ、動画イメージよりは学びやすいと思います
ね。
理系の方にとっては、展開方法・アタマの使い方をちょっと変えるだ
けの話なので、より身につけやすいと思いますよ。
ITの方も、プログラミングのフローチャートの「ようなもの」とお
考えいただくと、考えやすいですね。
文系の方にとっては、ちょっとハードルが高いかもしれませんが、誰
でも頑張ればできます。やるか、やらないか、だけですね。
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◆普遍化その2:「制約要因」を捉えて、「条件を明確化」する
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普遍化のポイントの「2つめ」は、「条件の明確化」です。
広い意味では、「構造化」の一部と言えなくもありませんが(構造化
するときに、制約要因なども合わせて構造化してしまえばよいので)
見え方が少々違うので、分けて扱うことにします。
●中級者は、成功できる場面が限られる
中級マーケターは、
・カリスマ自動車セールスマン
・カリスマ保険販売員
・伝説の中小企業経営者
といったレベルの方々です。
このレベルでも本は書けます。すばらしい実績を残してきているので
講演依頼も多いでしょう。話のうまい方は、研修の講師などもできる
でしょう……
が、その場合、「自分の経験」に依存します。
中級者は
○自分はこうやったらうまくいった。
↓
○だからいつでも、誰でもそうすればいいんだ
という発想をしてしまいます。いわゆる「一般化の誤謬」(Hasty
Generalization、一般化できないのに一般化してしまう)ですね。
これでは自身の成功体験に囚われてしまいます。大成功の後には、そ
の成功体験に基づきいつも同じことをして、後で失敗を繰り返してし
まいかねません。いわゆる「成功の復讐」をもたらします。
「制約要因」や「成功したときの環境の条件」などを明らかにできて
いないと、こうなってしまいます。
「こういう条件の下では」うまく言った、という「こういう条件」が
見えていないわけです。
ですから……
1)業種業態などの制約要因に縛られる
2)そのまま他人に使えるとは限らない(ヘタすると逆効果)
ということになります。
例えば、差別化軸が変われば戦い方は全く変わりますが、依拠すると
ころが「自分の個別具体的な成功体験」しかないために、差別化軸が
違う、変わった、というときなどに、対応できません。
すると、ある会社ではすごくうまくいっていた人が、会社や業種が変
わると苦戦する、ということになります。
ですから、中級レベルの方が書いた本を読んで、その通りに実行する
のは少々危険です。
前提となる状況が限定された中での成功体験ですから、読者の方で、
一旦それを「普遍化」することが求められます。
単純な話、自分の差別化軸が「密着軸」なのに、「手軽軸」での成功
体験本を読んでその通り実行すると、かえって害悪になるわけです。
これは、あまり語られませんが、結構恐いことですよね。
本を読んで勉強し、すればするほど、うまくいかなくなる、というこ
とすら起きかねません。
ですから「オレはこうやってうまくいった」という類の本(成功した
中小企業経営者や、カリスマ○○○が書かれる本のほとんどはそうで
す)は、「自分と戦略が近い」という限りにおいて、参考にされると
いいと思います。逆に、戦略が違う場合においては、「普遍化」する
ことが必要ですし、その通りにやって成功するとは限りません。
スキーでも、あまりうまくないと、どの斜面においても同じ滑り方を
してしまいます(というか、同じ滑り方しかできないんです)。
斜面(斜度、雪の状態、混雑状況など)が変われば滑り方を変えるべ
きなのですが、同じ滑り方しかできないので……
「斜面を選ぶ」
ということになってしまいます。
例えば、春先で雪が重い状態では、スキーによっかかるような滑り方
でも大丈夫ですが、ツルツルのアイスバーンでそんな滑り方をしたら
すぐ転倒してしまいます。
ある斜面(=ある条件)ではうまく滑れても、斜面(=条件)が変わ
れば、転んでしまうわけです。
私は、スキーがヘタだった頃は(今でもヘタですけど)、この「斜面
を選ぶ」という言葉の意味そのものがわかりませんでした。が、少し
ずつ上達するにつれて(それでもヘタですけど)、やっとわかるよう
になってきました。
●上級マーケターは「条件を明確化」できる
上級マーケターは、中級時代に
「条件が変わったために、自分の成功体験が通用しない」
という体験を何回もしています(上級者の特徴の1つが失敗の数の多
さです。全く失敗していない人が上級者であるはずはありません)。
「自分の成功体験は、限られた条件下でしか通用しなかったんだ…」
ということを骨身に染みて覚えさせられる失敗体験をしてきているわ
けですね。
上級マーケターが中級マーケターだった時代に、「カリスマ○○」と
もてはやされて、ある意味「天狗」になる時期もあったでしょう。し
かし、「それが通用しない」という、「天狗の鼻を折られた」ような
体験もしているわけです。
そのような「成功」「失敗」を繰り返して……
「一体何でなんだろう? 何であのときは成功して、このときはうま
く行かなかったんだろう?」
と考えます。
すると……
「そうか、あのときは、「このような状況において」、こうしたから
成功したんだ。こういう条件下における成功体でしかなかったんだ」
と気づくわけですね。
つまり、自分の成功を、「限定された状況において」捉えられるよう
になるんです。
うまいスキーヤーも、「こういう斜面だから」こう滑ったらうまく滑
れたという「条件の明確化」ができます。そして、斜面に合わせて、
滑り方を変えていくわけです。
例えば、「中級者」以下の方は、「自分の成功は、会社のカンバンが
あってこそ」ということに気づいていない可能性があります。もしく
は、ある戦場においては、たまたま自分の強みが活きたけれども、戦
場が変わったらその強みは活かせない、ということもあるかもしれま
せん。
すると、成功体験をひっさげて、意気揚々と独立しても、実は自分の
成功の「条件」が、「会社のカンバンと製品力だった」であれば、独
立してもうまくいきません。「こんなはずでは……」と、なってしま
うんです。
中級者は、
○自分はこうやったらうまくいった。
↓
○だからいつでも、誰でもそうすればいいんだ
と考えてしまいます。
上級マーケターは、
○自分はこのとき、こうやったらうまくいった。
↓
○それは、こういう競合状況で、こういう顧客に対して通用した
↓
○今回は、ああいう競合状況で、ああいう顧客だから、ここは同じだ
けど、ここは違う。だから、この部分はあてはまらない
という、「条件の明確化」ができているんです。制約要因も明らかに
できています。
だから、
「今回は状況が変わった。オレの成功体験は通用しないどころか、害
になる。この状況での成功体験を持っている人は誰だ?」
と考えることができます。
また、自分の「成功体験」を使う場合も、一旦「条件を明確化」した
上で、話したり、使うことができます。
自分の成功体験を、
○こういった制約条件のもとで、
○こういう構造のときに、
こうしたら成功した、と考えられます。ですから、「何が何でも、ど
んなときでもこうすれば成功するんだ」ということにはなりません。
逆の言い方をすれば、「過去の成功体験が必ずしもあてはまるわけで
はない」ということをわかっています。
よく、「営業は足で稼げ」と言う方がいらっしゃいますが、多くの場
合は、これは、お客様が次々に生まれてくる、という「成長経済」と
いう条件においての成功体験です。
当然、現在は「条件」が変わっているので、通用しないことば多いの
ですが、それでも「オレの時代はなあ……」と営業のトップがやって
しまうわけですね。
自分が成功したときの「条件が明確化」できていれば、「オレの時代
は……」という発言は出てこないはずですね。
●中級レベルで独立するときは、「賞味期限切れ」に注意
ここから、中級レベルで独立するときには、少々注意しなければいけ
ないことがわかります。
中級者は、「普遍化」ができていないことはないでしょうが、まだ完
全ではないために、
「自分の成功体験」
しか売り物がなく、それが特定の条件下でしか通用しないことに、気
づいていないからです。
よくあるのは、「○○○社の成功法則」みたいな本を書いて、○○○
社の名前の「威を借りて」独立するようなパターンです。それから、
「こうやったら○○○万円儲かった! ××の絶対法則!」のような
まさに「特定条件下での成功」に頼ったノウハウを売り物にする場合
も同じです。
しばらくは売れるかもしれませんが、その成功体験の「賞味期限」が
切れてしまうと、売り物がなくなってしまいます。
中級レベルで独立することは、数年間は稼げる、という意味では十分
に可能です。しかし、その賞味期限の間に、「普遍化」スキルを磨き
あげて、「上級」にステップアップすることが必要です。
賞味期限は、長くても「数年間」でしょうから、その間に必死で頑張
って「上級」にならないと、あっという間に自分が「陳腐化」してし
まいます。
本を1、2冊出してそれっきり、というような場合は、中級で止まっ
てしまい、「普遍化」のカベが越えられなかった、ということも多い
ように思います。
逆に、上級マーケターは、「普遍化」できますから、本のネタなんて
いくらでもある、ということに気づくんですね。
ここまでをまとめますと、普遍化のポイントは、
○構造化
○条件の明確化
です。
「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」
と進んできました。
普遍化ができるようになると……○○○から自由になります。それは
一体……?
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◆今日のまとめ
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●上級マーケターは、見たモノを「解釈」し、「普遍化」できる。
「構造化」と「条件の明確化」を習得しよう!
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◆売れたま!を解除するには
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○まぐまぐ
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http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=010361
ご購読ありがとうございました! ご活躍をお祈りしております。
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▼今日の日記▲
尾てい骨の打ち身をこのコーナーで書かせていただいたところ、非常
に多くのメールをいただき、ありがとうございました。ご心配をおか
けしましたが、ようやく痛みも治まってきました(まだ痛いは痛いん
ですけどね……)。ジムでのトレーニングも再開できました。
さて……「売れる会社のすごい仕組み」のリニューアル本、すなわち
「新人OL つぶれかけの会社をまかされる」の続編のタイトルが決
まりました。
新人OL 社長になって 会社を立て直す
です。
イラストは、「新人OL つぶれかけの……」のような、女の子(も
ちろん真子です)のイラストです。前回より、ちょっと勢いがある感
じですね。
ベースとなった「売れる会社のすごい仕組み」よりも、全体に流れを
スムーズにし、理論説明もシンプルにして読みやすくしてあります。
「新人OL つぶれかけの会社をまかされる」
は、入門→初級にステップアップするための本です。
「新人OL 社長になって 会社を立て直す」
は、初級→中級 にステップアップし、上級の扉に手をかける、くら
いのレベルの本ですね。
お陰様で、前作(新人OL つぶれかけの〜)が相当売れたこともあ
り、初版部数も多く、既に書店さんからも結構ご注文をいただいてい
るようです。ありがたいことです。
早ければ、今月末頃には出る予定ですので、まだお読みになられてい
らっしゃらない方は、手に取られてみてくださいね。
●今日のiPod Tune:猛暑を楽しもう! 夏の歌2011
もう夏休み! 夏真っ盛り!
涼しいな、と思ったら、また暑さが戻ってきました。蝉の声も聞こえ
るようになりましたね。
夏の歌2011です! 去年は、洋楽ばかりだったので、今年は和洋
乱れ撃ち!
夏と言えば海! 湘南!
ということで、今日の1曲は……
○ゆ・れ・て湘南 by 石川秀美
1982年の、石川さん2曲目のシングル。大ヒットしたかと言われ
ると、そうではないかもしれませんが、年末の新人賞などでも結構歌
われて、強い印象を残した記憶があります。
もちろんやっくんの奥様ですが、今でもたまにCMなどに出てきます
よね。
花の82年デビュー組としてアイドル全盛時代を築いた一員、正統派
のノリの良いアイドルポップス。今聴いても、80年代という時代の
ノリの良さが蘇ってきますね♪
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◆次号予告:達人マーケターへの道 8
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●まだまだ続く「上級マーケター」編。今すぐに上級になるのは難し
くても、頑張れば近づけます。頑張っていきましょう!
▼飲み会に、数部印刷して行こう。グチ大会より、前向きの話を!
▼彼氏・彼女との、知的な話題づくりに!
▼ご無沙汰していたあの人との会話のきっかけに、転送しよう!
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