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2013年1月18日金曜日

売れたま!特別編Vol.206 2013/01/17 セグメンテーション特集 7

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
 〜MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン〜
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.206(累計0982) 2013/01/17
購読者:27,935 (まぐまぐ:16,374 メルマ!:948 めろんぱん:10,613)

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 ■■__年末年始特別号:セグメンテーション特集 7__■■■
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●ステップ2:普遍化→ステップ3:括る、のプロセスは、一見違う
 人達の「ニーズの共通点」を探すこと!


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◆年末年始特別号!
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年末年始好例の「特別号」は、やっぱりお馴染みのこの2人。

我らがヒロイン「売多真子」(うれた・まこ)と、真子の親戚にして
そのメンター「売多勝」(うれた・まさる)です。2人は以下の本の
登場人物です。まだお読みでない方はぜひ!


○「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」 佐藤義典著
http://ow.ly/89pSR

売多真子が、勝の助力を得てイタリアンレストランの新企画に奮闘!
マーケティングの最初の1冊としてオススメ。


○「新人OL、社長になって会社を立て直す」 佐藤義典著
http://ow.ly/6s63d

上の本の続編。真子が社長になり、ライバルと戦っていく! 戦略構
築から実行プロセスまで、社長の視点を物語で体感!


例によってこのシリーズはどのくらいの長さになるかは、この2人の
活躍次第ですので、現時点ではわかりません。


今回の特集は、「セグメンテーション」! マーケティングで恐らく
は一番難しいこのと1つです。

そのセグメンテーションにどう切り込むのか?



●あらすじ

大晦日の夜、売多真子と勝は、年末に売多家が集まる温泉宿へと一緒
に向かった。電車の中で、そして除夜の鐘を聞きながら続いた2人の
レッスン。

一夜明けて、お正月を迎えて……



今号はシリーズ第7回目です。

最近お読み始めになられた方は、バックナンバーからどうぞ。第1回
目はコチラです↓

http://archive.mag2.com/0000111700/20121228030000000.html

ここから「次の記事」をクリックしてお読みください。



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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。


売多家一同が温泉地の老舗旅館に集まって新年を迎えた元旦。勝と真
子は、朝食の会場でマーケティングレッスンを行っていたが、昼食の
ために館内の食堂へと出かけ、レッスンの続きをしている。

勝はトンカツ定食を、真子は中華丼を注文、食事の間も騒がしい。


「じゃ、カツ1切れもらうねー」
「あ、ふざけんな、返せ、その1切れで全体の14.3%……」
「食べちゃったよーだ……」
「じゃあ中華丼のウズラ卵もらうからな」
「あ、ダメ……ああああ! ひっどおい! 1つしかないのにぃ!」
「先にやったのはそっちだ。正当防衛だからな」
「じゃあもう1切れいただこうっと」
「ダメ。もう絶対やんねー」
「何よー、そんな子供みたいに隠しちゃって!」
「トンカツもう1人前頼めよ。オレも全然食えるしな」
「うん!」
「ってやっぱりダメ。食い過ぎるとアタマの働きが鈍る」
「きゃははは、十分食べてるじゃん! ご飯お代わりまでして」
「だからお代わりだって1杯でガマンしてるんだろうが」


「ふう……ご馳走さまでしたぁ」

食べ終わった真子の、ぱんと両手を合わせ、うなずくような仕草。ぴ
ょこんという小動物のような動作が愛らしい。

「アイスコーヒー遅いな……食ったらすぐ飲みたいんだけどな」
「もう、せっかちなんだからぁ」
「せっかちなんて、オマエに言われたくないぞ。まあ始めるか」


真子:うん! じゃあ前号の復習よね。今やってるのはセグメンテー
   ションの「括って広げる3ステップ」

真子がノートを広げる

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る


真子:前号でやったのは「ステップ1:顧客像の具体化」。まずは、
   具体的な顧客像を詳しく描き出す。

勝 :そうだな。顧客像が具体化されると、何が決まる?

真子:ニーズが決まる! それに伴って使い方も決まる!

勝 :何で?

真子:ニーズは使い方に現れるから!

勝 :よし。そうするとどうなる?

真子:商品コンセプトが決まる! 人×TPO! どんな人がどうや
   って使うかが決まる!

勝 :そうすると、何が決まる?

真子:売り物、売り方、売り場、売り値、つまり4Pが決まる! パ
   ッケージとかも決まる!

勝 :そうだな。あとは?

真子:セグメンテーションで例えば「3つに分ける」とき、分けるん
   じゃなくて、「3人の具体的な顧客像を描く」こと。

勝 :そうそう。3つに分けるんじゃなくて、3人描いて括る。

真子:それで、どうやって括るの、っていうところで終わったんだよ
   ね?



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◆ステップ2:ニーズの普遍化
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勝 :今回から、「ステップ2:ニーズの普遍化」に入って行こう。
   ノート取れよ。

真子:うん、わかってるって。

勝 :「普遍化」は要は「括られる人達のニーズの共通点を探す」っ
   てこと。

真子:えっと……この後のステップ3で「括る」っていう作業をする
   ために、だよね?

勝 :もちろん。ステップ2では、その「括るための切り口」ってい
   うか「括り口」、を探す。それが「ニーズの共通点」

真子:「共通点」っていうのは?

勝 :違う人達を「括る」には、何らかの「共通点」が必要だろ。性
   別・年代、だって「共通点」の1つだからな。

真子:あ、そっか。「共通点」があるから括れるんだ。

勝 :で、「人」の共通点じゃないぞ。「ニーズ」の共通点だぞ。違
   う人達を「括る」んだから、人の共通点があるとは限らない。

真子:なるほどねぇ……「違う人」を括るのは、「共通するニーズ」
   ってことかあ。

勝 :これ、考え方は単純だけど、「ニーズの共通点」を探すのって
   結構難しいんだよな。やってみるとわかるけど。

真子:そうなの?

勝 :じゃ、やってみるか? 真子、今この食堂にいる人達のニーズ
   を普遍化してみろ。

真子:え? この旅館に泊まってる人?

勝 :そうとは限らない。泊まってなくても、食事に来るお客さんが
   いる。大体それニーズの共通点じゃなくて「人」の共通点だ。

真子:あ、そうか。じゃあ……おなかが空いてる! きゃははは!

勝 :そう!!!

真子:え? いーの?

勝 :なんと、今ここにいる人の「ニーズの共通点」は、「昼食を食
   べたい」ってことだ!!

真子:きゃははは、そりゃそーだよねー!

勝 :まずはそこからだ。で、さすがに「昼食食べたい」っていうニ
   ーズだと、普遍化しすぎ。もう少し戻そうぜ。

真子:「戻す」って、具体的な方に戻すってこと?

勝 :そうそう。「普遍化」を直訳すると「抽象度を上げる」ことに
   なるんだけど、その「加減」が難しい。

真子:抽象度を上げすぎると意味がなくなっちゃうよね。「昼食食べ
   たい」なんて、当たり前だから。

勝 :だから「ステップ3:ニーズで人を括る」を見据えながら、ち
   ょうどいいところを探す。

真子:ど、どうやって?

勝 :「達人への道12」*でやった、「抽象度をコントロールする
   ボリュームツマミ」って覚えてるか?


達人への道12↓
http://archive.mag2.com/0000111700/20110823032000000.html


真子:えっと……あ、うん、言葉の抽象度を上げ下げするんだよね?
   音量のツマミを上げ下げするがごとく。

勝 :そうそう。抽象←→具体の、いいところで止める、達人レベル
   のスキル。

真子:え……ええ!? 達人レベルじゃ、私にはムリじゃん!

勝 :だからセグメンテーションは難しいんだよ! でも「ムリ」で
   はない。緻密に考えていけばできる。やってみようぜ。

真子:う、うん……

勝 :だから今この食堂にいる人達のニーズは?

真子:えっと「昼食を食べたい」は当たり前で……あとは「場所」だ
   よね。この辺で昼食を食べたい。

勝 :そうだな。「どんな」昼食だ? これは、具体性のボリューム
   ツマミを上げていくための質問。

真子:ここは普通の定食が多いから……「和風の定食」が食べたい?

勝 :それは具体性ボリューム上げすぎ。真子、定食食べてないじゃ
   ん。中華丼だろ? 定食じゃないじゃん。

真子:あ、そっか。

勝 :別にオレ等、「和風の定食」を探してなかっただろ。今度は、
   抽象度のボリュームツマミを上げろ。

真子:うーん……無難なものを食べる店、って感じ?

勝 :「無難なもの」だと戻りすぎ。抽象的すぎる。パスタだって無
   難だけど、ここには無いぞ。

真子:ツマミの調整、難しいねー

勝 :これ、結構ロジカルシンキング的な能力も必要だからな。

真子:あ、じゃあ、「和風の無難なモノ」?

勝 :そんなもんだな。次は別のボリュームツマミを操作しよう。
   「値段」はどうだ?

真子:千円弱。まあ普通の値段だよね?

勝 :あとは、この店の雰囲気とかかな。

真子:あ、そっか。なんかさー、そういう「切り口の要素」を探すの
   が難しいね……言われればわかるけど……

勝 :そう。どんなボリュームツマミがあるのか、っていうのを考え
   るのも結構大変。で、店の雰囲気は?

真子:割合落ち着いた感じ。数人で来て、話せるし。

勝 :そうだよな。落ち着けることはオレ等にとっては大事だよな。

真子:やっだー、やっぱり勝さん真子とゆっくり話したかったんだぁ

勝 :いいから、まとめろ。

真子:「この辺で、和風の無難なモノを、落ち着いた雰囲気で、数人
   で、1人千円程度で食べたい」って感じかな?

勝 :じゃあ周りを見回してみろ。

真子:え……あ、まさにそんな感じの人達ばっかりだ!

勝 :それが今この食堂にいる人達の「ニーズの共通点」だな。それ
   が「普遍化」されたニーズ、ってことだな。

真子:なーるほどぉ。これなら確かに性別とか年代とかは関係ない!

勝 :っていうか、周りは年配の方が多いだろ。オヤジのオレですら
   大分若い方だぞ。

真子:あ、ホントだねー。

勝 :「ステップ3:ニーズで人を括る」っていうのは、今の「普遍
   化されたニーズ」を持つ人を具体化していく、ってこと。

真子:あ、「ニーズの共通点」を探してから、それを持ってる人を
   「括って」いくんだ!

勝 :「ニーズの共通点」がわからなきゃ、「括る」ことができない
   からな。

真子:でも、その「ニーズの共通点」の、「要素」を探したり、決め
   たりするのが難しいね。何がその「共通点」になるのか……

勝 :そうなんだよ。今の要素で足りてるか、多すぎないか、検証し
   ないといけないしな。

真子:うん……



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◆どの共通点を「切り口」として選ぶのか?
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勝 :だから、その「ニーズの共通点」は何なのか、っていうのをき
   ちんと定義する必要があるな。

真子:ど、どうやって?

勝 :シリーズ第2号*でやった、スーパーがシニアの方向けに導入
   したカートの話、覚えてるよな?


*バックナンバー↓
http://archive.mag2.com/0000111700/20121231220000000.html


真子:うん。カートに載せた買い物カゴを、袋詰め台にヨイショって
   載せなくてすむカートを導入したって話だよね。

勝 :その「ニーズの共通点」は、何だっけ?

真子:「重くてカゴを動かすのが大変」な人。それなら、私みたいな
   か弱い女の子もシニアの方と一緒に「括られる」。

勝 :そうだな。「普遍化」は「括られる人達のニーズの共通点を探
   す」ことだからな。

真子:この場合は、「重くてカゴを動かすのが大変」が「ニーズの共
   通点」でそれを探す、っていうのが「普遍化」か……

勝 :その「ニーズの共通点」を持つのが、シニア、女性、一度にた
   くさん買い物をしてカゴが重い人、なんかだよな。

真子:うん。あれ、何かカンタンにできそうだ。

勝 :あのなあ、今「表現の難易度」はすっごい落としてるけど、
   「内容の難易度」はすっごい高度なこと言ってるからな。

真子:そ、そうなの?

勝 :カンタンにできればいいんだけどな……あ、そうだ。

真子:え?

勝 :じゃあマコちゃん、バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウ
   リを2つの仲間に分けてくれるかなー?

真子:え? バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウリ?

勝 :そーでーす。マコちゃん、どーかなー?

真子:はーい、バナナ・イチゴ・メロンの「果物」さんたちと、トマ
   ト・キュウリの「野菜」さんたちが仲間でーす。

勝 :じゃあ、それぞれの仲間の「共通点」は、「果物」と「野菜」
   ということでいーのかなー?

真子:そーでーす!

勝 :ブー! 間違いでーす!

真子:え?

勝 :イチゴもメロンも「果物」ではありませーん。イチゴもメロン
   も、ついでにスイカも「野菜」なのでーす。

真子:そんなことありませーん、イチゴもメロンもスイカも果物に決
   まってまーす。

勝 :マコちゃんは、何をもって「果物」って言ってるのかな?

真子:え? 甘くておいしーモノでーす! イチゴもメロンも甘くて
   おいしーから果物に決まってまーす!

勝 :じゃあ、「渋柿」は果物じゃないんですねー? 甘くない野イ
   チゴもあるよ? それも果物じゃないんだねー?

真子:そんなの知りませーん。センセー、性格悪いでーす。

勝 :イチゴより甘いトマトもあるらしーよ? それは果物かなあ?
   それとも野菜かなあ?

真子:メロンとイチゴが果物じゃないなんて言うなら、理由を言って
   くださーい。立証責任は言い出しっぺにありまーす。

勝 :性格悪い子供ですねー。あのねマコちゃん、メロンとイチゴは
   木にならないから野菜なんだよ。

真子:へ? メロンとイチゴは、木にならないから、野菜??

勝 :正確に言うとこんな感じ。


○野菜:1年生及び多年生の草本(そうほん)になる実
○果物:永年生の樹木(じゅもく)になる実

すいか、メロンはウリ科の1年生果菜(野菜)で、いちごはバラ科の
多年生果菜(野菜)

http://www.maff.go.jp/hokuriku/kids/question/green03.html


真子:え、ええ!? あー、メロンは「ウリ」なんだあ……

勝 :そうでーす。生物学上はそうなりまーす。スイカも西瓜ってい
   うくらいで、ウリの仲間でーす。カボチャもそうでーす。

真子:でもセンセー、スイカもメロンもイチゴも果物屋さんに売って
   まーす。

勝 :果物屋さんに売ってるモノが果物なら、果物屋さんで果物ナイ
   フが売ってたら、それも果物なのかなあ?

真子:違いまーす。

勝 :だからねー、「どの共通点を共通点とみなすか」で、全然違っ
   てくるんですよー。

真子:え? わかりませーん。

勝 :だから、バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウリをどう
   「分ける」っていうとき、「ナニで」分けるかが大事だよねー

真子:え?

勝 :今、分けるための基準として、どんな「切り口」が出てきた?

真子:えっと、甘さでしょ、それと木になるかどうか、それと、果物
   屋さんで売ってるか……

勝 :だからそれによって「括られ方」が違うわけだから、「どの共
   通点で括るか」っていうのをちゃんと考えろって話だ。

真子:え、あ、そうか! 「どの共通点を選ぶか」によって、括られ
   るモノが違うんだ!

勝 :そう。共通点は色々ある。で、「どの共通点を選ぶか」ってい
   うのが、セグメンテーションのポイント。

真子:そっかあ……色々ある中から選ぶのが難しいんだ……

勝 :それによってさ、「考え方の方向性」が大分変わる。

真子:イチゴが「果物」と「野菜」のどっちに入るか、とかね、きゃ
   ははは!

勝 :そう、それが言いたかった。どの人がどのセグメントに入るか
   が「共通点」によって変わるだろ。

真子:うん!

勝 :で、「括られる人達の共通点」が、セグメンテーションの「切
   り口」になるわけだからな。

真子:えー、じゃあそれってセグメンテーションそのものじゃないで
   すかー! お客様の「切り口」を探すんだから……

勝 :そうだよ。だからセグメンテーションは難しいんだってば。

真子:じゃあ、どうやってその「切り口」を探せばいいの?



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◆ステップ3:ニーズで人を括る
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勝 :そういう話になるけど、その前に「ステップ3:ニーズで人を
   括る」もやっちゃおう。

真子:はーい。

勝 :これも考え方は単純。ステップ2の探した「ニーズの共通点」
   を「人」に落とし込む。同じ「共通点」を持つ人を探す。

真子:あ、そうか、ステップ2は「ニーズの共通点」で、ステップ3
   は、それが「人」の話になるんだ。

勝 :そうそう。ステップ2は「ニーズ」。ステップ3は「人」。こ
   こは切り離して考えるのがポイント。

真子:えっと……ステップ2で、「ニーズ」を一旦「人」から切り離
   すから、ステップ3で新たに「人」を広げられるんだよね?

勝 :まさにそういうこと。「ニーズ」と「人」を違うレイヤーって
   いうか違う「層」で考えるから、それができる。

真子:へー、この「括って広げる3ステップ」って、単純そうで、結
   構考えてあるんだねー。見直しちゃった♪

勝 :オマエに言われるとはな……BASiCSだって単純だけど、
   すっごい奥深いだろうが。

真子:あー、BASiCSと同じか。単純だけど奥が深い……

勝 :それだ。簡単そうで、やってみるとこれがまた難しいんだな。
   で、さっきのスーパーのカートの例だと、どうなる?

真子:スーパーのカートで言えば、「重くてカゴを動かすのが大変」
   っていうのがその「ニーズの共通点」だよね。

勝 :そう。その「ニーズの共通点」を持つ人を「探す」っていうか
   「思いつく」のが結構難儀。腕の見せ所。

真子:まずは「力の無い人」かな?

勝 :そうだよな。「重いモノを動かすのが大変」っていうのは、
   「ニーズ」で、「力の無い」のは「人」の特徴だよな。

真子:ホントだあ! いつの間にか「ニーズ」が「人」になってる!

勝 :いつの間にか、じゃなくて、それを明示的にやるんだよ。

真子:だから、シニアの方と、女性と……あ、子供もそうか。

勝 :それ、全然「括って」ないだろ。人口の半分以上がその中に入
   ってくるぞ。シニアと女性と子供なんて、ほとんど全員だ。

真子:え……ああ、ホントだ、きゃははは! じゃあもっと具体化し
   なきゃセグメンテーションにならないねー。

勝 :当然。前号でやっただろ。「3つに分ける」んじゃなくて、
   「3人の具体像を描く」んだぞ。

真子:あーそーだった!

勝 :女性でも、2、3品しか買わない人だったらカゴはそんなに重
   くないだろ?

真子:あ、確かに。お弁当とジュースだけだったら、そもそもカゴな
   んかいらないし。

勝 :となるとさ、結局大事なのはこの場合、何だ?

真子:カゴの重さ! つまり、一度にたくさん買うかどうか!

勝 :まずはそれだよな。でも、力があれば、カゴが重くても別に問
   題無いわけだから……

真子:あ、そっか。じゃあ、力の無さも大事だね。だから「一杯買っ
   てカゴが重くて、かつ力の無い人」

勝 :そうそう。そこまで具体化されると、括りやすくなるよな。

真子:あー、なるほど、ステップ2の普遍化と、ステップ3の括るの
   を言ったり来たりしながら括っていくんだ!

勝 :そう。「抽象度をコントロールするボリュームツマミ」を合わ
   せていく。

真子:あ、ここでもそれやるんだ。

勝 :もちろん。で、じゃあ「カゴの重さ」で括っていくと、どんな
   人がカゴが重い?

真子:えっと……まとめ買いする人?

勝 :そうだよな。来店頻度が低い人。どんな人が来店頻度が低い?

真子:忙しい人。あと、なかなか外に出られない人とか?

勝 :すると、「女性」って言っても、毎日来店する主婦の方は「カ
   ゴの重さ」がそれほどでも無いかもしれないよな。

真子:あーなるほどぉ。共働きで、たまにまとめ買いする人とかだ。

勝 :そうそう。そうやって「括られる人」が具体化していくだろ。
   あとは、どんな人がカゴが重い?

真子:あと……あ、野菜とか買う人。白菜1/2、キャベツ1つ、大
   根1本買ったら、もう大分重いよ!

勝 :そうそう。買うモノの重量。そうなると、重いモノって他にも
   あるだろ?

真子:あ、うん。2Lのペットボトルとか。

勝 :するとさ、どんな人がカゴが重い? 1人暮らしの人が白菜半
   分とか買わないよな? 使い切れないぞ。

真子:あ! そうか、じゃあ、家族がいる人?

勝 :そうそう、そうやってどんどん具体化されていくだろ? ちょ
   っとまとめてみ。

真子:えっと……「共働きで、家族がいて、まとめ買いする力の無い
   女性」かな。

勝 :ほら、大分具体化されただろ。

真子:なーるほどねー。となると、ステップ2の「普遍化」、ステッ
   プ3の「括る」は、一緒にやった方がやりやすそうだね。

勝 :一緒にっていうか、行ったり来たり、だな。同じように、元々
   このスーパーが狙っていた「シニア」の方も、具体化する。

真子:そっかあ……

勝 :例えば「腰が曲がりつつあって、3日に1回来店する1人暮ら
   しの年配者」なんかになるよな。男女含めて。

真子:あ! そうすると、「忙しい共働き女性」と「1人暮らしの年
   配男性」っていう、全然違う人が「括られる」!

勝 :だろ? 見かけ上全く違う人が「同じニーズで括られる」って
   こういうこと。「ニーズの共通点」を持ってる。

真子:確かにこれだと、性別とか年代で分けるのはムリがあるよね。

勝 :だから「ニーズ」で括る。括るためには、「ニーズの共通点」
   が必要。それが「ステップ2:ニーズの普遍化」

真子:あ、それで「ニーズの共通点」を知るためには、まずはどんな
   ニーズがあるのかを知らなくちゃいけない。

勝 :だから、「ステップ1:顧客像の具体化」が必要。

真子:きゃあああ、キレイに流れるー!

勝 :そう、実戦的で強い理論って実は「美しい」。無理なく流れる
   からな。

真子:なんかさー、勝さんが「美しい」とか言う言葉を使うと、すっ
   ごい違和感あるよね……


「うるせーよ。オレはロジックに関してはすっごい美的か、かか、感
覚が……」と珍しく勝が噛んだ。

「きゃははは、ほらぁ、美的感覚なんて言い慣れない言葉使うから」
「オマエにも論理的美的感覚があれば、もう少し賢かったのにな」
「何よー、いいもん、私はルックスが美しいからいいんだもん」

2人が騒ぐ間に、食堂の従業員が食後のアイスコーヒーを2人分トレ
ーに載せて運んでくる。

「お待たせしました、食後のお飲み物になります」

「あ、やっときた」
「勝さん、そーゆーこと言っちゃダメだよ。昼時は大変なんだから」
「はーい。いっただきまーす」

勝がアイスコーヒーのストローに口をつけると、黒い液体が猛スピー
ドでストローを上昇し、水面が急下降する。勝が5秒で飲み干した。

「お代わりください!」
「え、あ、あの、別料金になりますが……」
「はーい、それでいーですからすぐお代わりください!」
「あ、はい、承知しました」

「勝さん、飲むの早すぎぃ! もっと味わって飲みなよー」
「オレの勝手だろうが。一刻も早くカフェインが欲しかったんだよ」
「あーそーか、真子のために、もっとアタマを働かせないとねー」
「違うだろ」
「そーかー、真子のためかー、もー、困っちゃうなー」

勝は真子を無視して、「早く来ないかな」と言いたげに、食堂の調理
場に顔を向けた。



次号に続きます!


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◆今日のまとめ
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●普遍化→括る、のプロセスは、「ニーズの共通点」を探すこと!
 抽象度をコントロールしながら括れる「切り口」を探そう!


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▼今日の日記▲

13日、日曜日にNHKで放送されて色々と話題になった「深海の超
巨大イカ」。HDDに録画していたのを私も見ました。

ダイオウイカは、ドラクエで船を入手して海に出るとやたらと出てく
る、あの馴染みのモンスター……ではもちろんなく(スミマセン)、
謎の生態の巨大動物。

もちろんダイオウイカ自体の話も面白かったのですが、何より感銘を
受けたのは、40年間イカ研究を続け「研究の集大成としてこの目で
見たい」(というようなご発言だったかと思います)とおっしゃった
窪寺恒己博士の執念のような気迫。

今まで、生きているところが写真に撮られたことすら希だったのに、
それを目の前で見た初めての人類に!

「40年間」には重みがありますよね……私はマーケティングの世界
に足を突っ込んでから20年以上ですが、まだ半分かあ……という気
持ちと、あと半分しかないのか!という焦りと、両方の感情が一気に
巡ってきました。

自分はどれくらい「執念」を持っているだろうか。
あと20年でどこまで行けるのだろうか。

背筋がピンと伸びる番組でした。

あの番組、NHKの話題作りもうまかったですね。こういう番組をた
くさん作ってくれるのであれば、受信料喜んで払いますよ(今ももち
ろん払ってますけど)。



○1000号間近! 勝手にカウントダウン

*今号で(多分)累計982号 1000号まであと18号!



●今日のiPod Tune:始まりの歌2013


1月は1年の始まり! 始まりにふさわしい歌で始めましょう!

1月は、輝ける1年への旅立ちの年!

というわけで、今日の1曲は……


○輝いた季節へ旅立とう by 松田聖子


1994年12月リリース、この曲で久々の紅白出場。ランキングは
さほど上がらなかったものの、シングルの売上は往年の時代に匹敵す
るレベルでした。

ノリの良い80sアイドルポップスに、てらいの無い、ストレートな
歌詞。こういう歌詞を真っ正面から歌って、心に響くのが彼女の魅力
ですよね。

私も倣って……さあ、今年も輝いた季節へ旅立とう!



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