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2011年5月12日木曜日

売れたま!戦略と組織編Vol.002 2011/05/12 サマンサタバサ前編:ノウハウの数値化

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━━━━━━━━━━━━━━━━戦略と組織編Vol.002 2011/05/12
購読者:24,672 (まぐまぐ:16,213 メルマ!:888 めろんぱん:7,571)

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 ■■■■__サマンサタバサ前編:ノウハウの数値化__■■■■
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「ノウハウ」は最終的には「数値化」「計測」できるところまで、
 落とし込もう!


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◆新シリーズ:戦略と組織 スタート!
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●戦略と組織

今年の4月からスタートした、「戦略と組織編」。今回は2回目です
ね。


戦略の「実行主体」であるところの「組織」について、きちんと整理
しておきたい、ということです。


●組織は戦略実行の「手段」であって「目的」ではない

なぜ単に「組織」編とせずにわざわざ「戦略と組織」編と銘打ってい
るかというと、「組織をどうするか」という問いを、戦略と独立して
発することは無意味だからです。「組織」は、手段であって目的では
無いからです。

そもそも「万能な組織」というのはありませんよね。あるのだったら
教えていただきたいです。経営学上の超大発見となります。無いから
こそ、みんな「最適な組織」を目指して苦労しているわけです。

なぜ「万能な組織」な組織が無いかというと、組織は戦略実行の手段
だからです。そして、「万能な戦略」もありませんから、それを実行
する手段にも万能なものはありえない、ということです。

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◆サマンサタバサの「数値化委員会」
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●国内バッグメーカーの雄、サマンサタバサ

今回とりあげるのは、女性向けバッグの「サマンサタバサ」です。女
性向けのカラフル・華やかなバッグで知られた存在ですね。

http://www.samantha.co.jp/

正確に言うと「サマンサタバサ」はブランド名で、会社名は「株式会
社サマンサタバサジャパンリミテッド」です。

「サマタバ」と略されることが多いようですが、これは一般的には、
「サマンサタバサ」というブランドを指すようですね。ということで
会社については、「サマンサJP」と以下略します。


単体(連結ではなく、という意味です)での売上は170〜180億
円前後の規模です。

そのサマンサJPの業績ですが、以下のような感じになっています。


      売上高(億円)  営業利益率(%)
2007  170      17.7
2008  185      11.3
2009  177      4.6
2010  175      6.4
2011  178      6.6

(全て単体・2月期。同社決算短信より。営業利益率は筆者計算)


2007年から2009年にかけて、営業利益率が急落しているのが
わかりますね。


営業利益率が(結果的には)最低だった2009年、サマンサJPが
打った手は、面白いことに……

「数値化委員会」

だそうです。

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

○サマンサタバサジャパンリミテッド(サマンサJP)が復調の兆し
 をみせている。2009年に導入した、寺田和正社長の判断や評価
 基準を「見える化」する試みが軌道に乗っている。


○サマンサJPは09年、「数値化委員会」という組織を発足、店舗
 運営、生産管理、店舗開発、、企画、PR・広報、人事、の6分野
 で客観的な基準を作成。

2011/05/02, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−


その結果、2010年以降、利益が回復基調に載ってきた、というこ
とですね。

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◆急成長の歪み
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●急成長をとげたサマンサタバサ

1994年に発足以来、サマンサJPは急成長してきました。

     売上高(億円)  成長率(%)  経常利益(億円)
2002  52                6.5
2003  61       18.0     3.2
2004  86       40.3    15.0
2005  98       14.5    12.7
2006  136      37.6    20.6

(同社 Business Report 2006年2月期)

本当は営業利益を見たいのですが、有価証券報告書にも載っていない
ため、やむなく経常利益を載せています。

マザーズ上場は、2005年12月です。

この5年間、売上も利益もすさまじい勢いで伸びているのがわかりま
す。


ここから先は、事実と一般論に基づく「推測」です。取材をしている
わけでもなく、根拠はありません。間違っていたら申し訳ありませ
ん。


対象物が、私が買うようなものではないので(自分では使いませんし
プレゼントもしたことがないので……)、顧客としての実感もないの
で、純粋に「事実」と「セオリー」を組み合わせて見ていくことしか
私にはできません。

もし、ユーザーとしての実感がある方がいたら教えてください。


一般論で言うと、このような急成長をしている会社には、歪みが出ま
す。

特に、「人材」の成長が追いつかない、というのが典型的な「歪み」
です。

ですので、ここで、同社の有価証券報告書から社員数を拾ってみまし
ょう。


      社員数
2002   32
2003   43
2004   49
2005  391
2006  507


2005年にケタ違いに増えているのは、雇用形態の変更などがあっ
たのかもしれません。詳細はわかりませんが、5年間で10倍以上に
なっていることがわかります。


30人程度であれば、社長がほぼ全て把握し、細かな指示をくだせま
す。が、500人規模では相当に難しくなり、一般論としては「不可
能」です。

しかも、有価証券報告書によれば、2006年の平均勤続年数は
「1.5年」と短いですから、ノウハウも継承されにくいでしょう。


ここで、MJの記事を見てみましょう。

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

○2005年の株式公開までは広告販促と連動した商品発注はすべて
 寺田社長が指示していた。しかし公開後はブランド責任者らに権限
 が委譲され、それぞれの経験と勘に頼る部分が増えていった。


○寺田社長の評価基準や判断を数値化し、組織で共有して検証や改善
 につなげる仕組みを作るのが狙い。

2011/05/02, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

それまでは、社長が全て指示し、会社全体がその通りに動いていまし
た。

しかし、社員数数百名規模になり、権限移譲したところ、そこでズレ
が生じた、ということが読み取れます。

それでも、2005年〜2007年は景気が良かったこともあり、高
い利益率を記録しています。

しかし、2008年9月のいわゆる「リーマンショック」などで景気
が悪化に転じたこともあり、利益率が一気に落ち込む、ということに
なったのではないでしょうか?

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◆社長にはできるけど……?
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●社長にできても、社員にはできない

社員数が増え、社員に権限移譲するにつれ、恐らくは、「社長にでき
ても全ての社員にはできるわけではない」ということが明らかになっ
たのだと思います。


以下の記事から、それが読み取れます。

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

○数値化委員会が発足した背景には2つの要因がある。1つは事業多
 角化の苦戦。07年に婦人服アパレルのメッセージ(現バーンデス
 トジャパンリミテッド)を買収。寺田社長がバーンデスト社長を兼
 任すると本体の営業力を落とし、主力のバッグ部門の売上高が10
 年2月期まで2期連続3%以上減少

2011/05/02, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−


若くて優秀な創業社長が組織を引っ張ってきた場合には、この「社長
にはできるが社員にはできない」という問題がよく起きます。

社長の仕事は、社員数が「数十人」を超えた時点で、「自分がやる」
から「ひとにやってもらう」に変わります。

すなわち「売れる会社のすごい仕組み」で「広岡会長」が言うところ
の「社長がいなくても回る」状態を作らないといけないわけですね。

これは、成長途上の組織にとっては、大きなカベになります。


それを何とかしようとしたのが、「数値化委員会」ということになる
でしょう。


−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

○「数値化委員会」は発足直後から、寺田社長の評価基準を見える化
 する役割を果たした。経常利益率が高かった06年2月期ごろの成
 功モデルを分析。寺田社長自身からも、どの局面でどういう評価を
 なぜ下したのか、聞き取った


○社員が1000人規模になっても社長が専務とともに全員と面接し
 て給与を決めるほど、個人商店的な色彩が強かった。しかし次のス
 テージで成功を収めるには「寺田イズム」を組織として共有する仕
 組みが欠かせない。

2011/05/02, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

この記事で言うところの「個人商店」から、「組織へ」という変化を
「数値化」でしようとしたわけです。


要は、ノウハウが「社長のアタマの中」にあったわけです。それを、
何とか表にひっぱりだして、共有して、みんなができるようにしよう
という取り組みですね。

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◆「ノウハウ」を「数値化」しよう!
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●社長のノウハウを数値化して、「見える化」

その「数値化して見える化」の成功例が1つあげられています。

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

○出店政策は、かつては社長が自ら立地を選び条件交渉をしていた。


○出店基準として「サマンサ出店基準フォーマット」を導入。全国の
 地域を魅力度で3段階に分け、それぞれ施設の「集客力」「階層」
 など主要4項目で数値で評価、一定の点数に達することを出店の条
 件とする仕組みにした。


○このフォーマットの導入で、最終的な決裁以外は担当者の裁量でで
 きるようになった。


○大阪・堺市の「イオンモール堺北花田プラウ」に4月16日、開い
 た「カラーズバイジェニファースカイ」は、高い点数評価を獲得し
 出店。開業日には中高生から40代の主婦まで100人近くが詰め
 かけ、販売額は予想を上回る80万円。「購買客単価は7千〜8千
 円と予想より高い」(同社)と言う。

2011/05/02, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

−−−−−−−−−−−< 記事要約 >−−−−−−−−−−−−

恐らく、この「フォーマット」は、社長のアタマの中にあったノウハ
ウを「見える化」したものでしょう。

何より「数値化した」というのがポイントです。数値化すれば、優先
順位がつけられます。そして、その優先順位の付け方がノウハウなの
でしょうね。

●「何をどう計測するか」

さて、ここであらためて「ノウハウ」について考えてみましょう。

ノウハウとは何でしょうか?

私の考えでは、ノウハウは


1)言語化
2)計測方法

から構成されます。


1)言語化

これが、おそらくは一般的に言う「ノウハウ」です。

「ああやって、こうやってこうしよう」

というものですね。概念的な定義です。

出店政策であれば「これこれこういうところに店を出すと売れる」と
言う条件付けです。


見落とし勝ちなのが、

2)計測手法

です。計測手法・手段が無いと、「条件を満たしているかどうか」の
判断ができません。

「何をどうやって測るか」ですね。

先ほどの「出店フォーマット」では、恐らく「こういう条件を満たす
と○○点」という計測(採点)手法があるはずです。

計測できなければ、判断できません。

「○○点以上ならばOK」というところまで来ると、ノウハウが相当
「精緻化」されていますね。

これは、出店政策、商品開発、宣伝広告、人事評価、など何でも同じ
だと思います。人事評価で言うと、コンピテンシーモデリングなど、なんでも
同じだと思います。


英語だと、

Conceptual Definition
Operational Definition

というような関係に近いです。この関係をすさまじく粗っぽく言うと

1)文系的・概念的な定義:文章での説明
2)理系的・数値的な定義:計測・数値化手法

という感じです。

これは、相互に補完的な概念として使えます。2)で計測できなけれ
ば、1)の概念的定義が甘い、ということになります。

ビジネスの世界には、1)ができる方は結構いますが、2)ができる
方は相当少ないように思います。


ちなみに、戦略BASiCSと戦略指標も同様の関係にあります。

1)手順 戦略BASiCS
2)計測手法 戦略指標

という関係ですね。戦略指標が導かれない戦略BASiCSは、ツメ
が甘い、具体化の程度が浅い、ということになります。

サマンサJPの数値化委員会は、

・店舗運営
・生産管理
・店舗開発
・企画
・PR・広報
・人事、

と、会社の広範な範囲に渡って数値化を行ったとのことです。


恐らくは「天才」である、寺田社長のアタマの中を分解し、言語化し
て社員が誰でも共有できるようにしよう、ということですね。

そして、それは冒頭の企業の急成長に伴う「歪み」(社長にしかでき
ない)を解決しようとしたものである、という文脈で考えると、よく
考えられた取り組みだと思います。


「掛け声」「気合い」では、できるようになりません。


いかにうまくノウハウをこのような「形式知」にするか、というのは
組織運営での重要なポイントの1つです。

●営業マネージャーの場合も同じ

これは、「自分がやらない」という場合のリーダーには共通して使え
る取り組みです。

わかりやすいのは、営業のマネージャーさんですね。

営業スタッフを10人抱えた営業マネージャーさんなんかは、自分で
営業するわけではないですよね?

だから、自分だけがうまく営業できてもしょうがありません。営業ス
タッフにどう動いてもらうか、ということになりますよね。

「売れ」「ガンバレ」「気合いだ!」で売れれば苦労しません。


その意味で、このサマンサJPから学ぶことは色々とあるかと思いま
す。


次号では、いよいよ「戦略指標」を考えていきます!

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◆今日のまとめ
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●「天才」のノウハウを「手順」「計測手法」で「見える化」して、
 組織全体で共有できるようにしよう!


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ご購読ありがとうございました! ご活躍をお祈りしております。


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▼今日の日記▲

このところ首都圏は雨続きですね……足下にお気をつけ下さいね。

私は、明日から、久しぶりにアメリカ・東海岸に行ってまいります。
仕事&知識のリフレッシュ、ですね。残念ながらあんまり遊びの時間
は取れなさそうです……


タイミングとしてはちょっと物騒なタイミングであるような気もしま
すが、そんなこと言ってると行く機会を失うので、行くことにしまし
た。それって、「今の東京は原発が怖いから行くのをやめよう」とい
うのと同レベルの不安なようにも思いますし。

久々に母校、ペンシルベニア大ウォートンスクールも訪ねて来ます。
母校に行くのは(というか東海岸に行くのは)5年ぶりくらいです。
母校で最先端のマーケティング(って、ホントはそんなものは存在し
ないんですが)事情も聞けそうですし、楽しみです。

●今日のiPod Tune:春のあったかソング特集!

ということで、私、明日からアメリカですから、今日の曲は……


○思いきりアメリカン by 杏里


「そのまんまじゃねーかよ、おい」ってツッコミが聞こえてきました
が(笑)、一応「春の化粧品シリーズ」という「一貫性」は崩して無
くて、1982年4月リリース、花王のコロンのCMソングです。

曲はもちろん知っているんですが、リアルタイムで知っていたかどう
かというと、多分「聞いたことがある」くらいの感じかと思います。
30年前のことなので、あまりよく覚えてません……

杏里さんのベスト盤を良く聞いていたので、そちらで覚えたような気
もします。彼女の曲には知られざる名曲も多く、ベスト盤はホント
「良質なポップソングの宝庫」です。

この曲も、春らしく、アレンジをちょっと変えれば、今そのまま行け
る曲。

15年前に通った、母校のキャンパスを歩きながら聞きたい曲♪

「思い切りアメリカン」してきます!

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●「マーケティング戦略実行チェック99」 佐藤義典 著
 マーケティング戦略実践:実行のためのチェックリスト
 日本能率協会マネジメントセンター
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●「ことわざで鍛えるマーケティング脳」 佐藤義典著 毎コミ新書
 ことわざだからわかりやすい、伝えやすい、マーケティング戦略
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●「実戦マーケティング思考」 佐藤義典著
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◆次号予告:サマンサタバサの戦略指標
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●次回は、いよいよ数値化の「本丸」、サマンサタバサの戦略指標を
 考えていきましょう!


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